フロントフォークをOHする

まずは一番上のテンションクリックをマイナスドライバーで左に回していって最弱にしておく。最強にしておくとフォークピストンを外す時などにテンションクリックスクリュー下部を壊す恐れがある。そしてその下の切り欠けに14ミリのスパナをかけてプリロードアジャスタを左に回していき、これも最弱にしておく。スプリングへの負荷を抜いておくのだ。最後に24ミリのメガネレンチでフォークボルトを緩めておく。ちなみに取り付け時の締め付けトルクは1.5〜3.0kg-m。

メンテナンススタンドで支えておいてフォークを抜く。順番としては、ブレーキキャリパボルト(2.4〜3.0kg-m)を外す。アクスルピンチボルトを緩める(1.8〜2.5kg-m)。フロントアクスルを抜く(5.5〜6.5kg-m)。タイヤを外す。フロントフェンダーを外す。ハンドルクランプを緩める。トップブリッジボルトを緩める(2.0〜2.5kg-m)。ステアリングステムボルトを緩める(4.5〜5.5kg-m)。これでフォークが抜ける。ちなみにブレーキキャリパはフレームの上に載せておいた。※( )内は取り付け時の締め付けトルク。

フォークボルトとその下につながるフォークピストンを分離する。これは固定しておいた方がやりやすいので一旦ステアリングステムにフォークをセットして作業。フォークボルト下部にあるロックナットとプリロードアジャスタの両方を14ミリのスパナで回せばロックナットが緩んでフォークボルトが外れる。ホンダのマニュアルの写真だとテンションクリックにマイナスドライバーを差して外しているように見えるが、これをやるとたぶんテンションクリックスクリューが壊れる。

フォークボルトが取れた状態のフォークピストン。下からスプリング、スプリングシート、スペーサ、スプリングシート、ストッパシートの順でインナーチューブ内に入っている。

スペーサ等やスプリングを取り外し、フォークオイルを抜く。フォークピストンのロッドからもオイルが出ていくので何度もストロークさせてよく抜いておく。きれいに抜いておけばインナーチューブを引き抜く時にオイルが飛び散らなくていい。

ボトムケース底のソケットボルトを6番の六角レンチで外す。これはロック剤が塗ってあるのでかなり固い。しっかりした工具を使わないとボルトの頭をなめてしまって立ち往生してしまうのだ。基本はボトムケースのキャリパステーの部分をしっかりとバイスにセットして固定し、T字タイプの六角レンチで緩ませる。写真のタイプでもちょっと役不足。均等に力をかけて回転させないと緩むものも緩まなくなる。このソケットボルトを外せば中のフォークピストンがごっそり抜けるのだ。

ダストシールを外す。マイナスドライバーでこじればすぐに外せるが、これだとボトムケースに少し傷が付く。なにか薄い当て物をした方がいいかも知れないが、今回は気にせずにさっさと外してしまった。

オイルシールのストッパリングもマイナスドライバーで引っ掛けて外す。先にフォークピストンを抜いてあるので、あとはインナーチューブをスライドハンマーの要領でガンガンと引っ張ってボトムケースから抜く。

ボトムケースの中のスラッジなどの汚れをパーツクリーナーできれいに洗浄しておく。今回は細かい金属片が多かった。

フォークピストン下部が少し錆びていたのでサンドペーパーで磨いておいた。その他のパーツもすべてパーツクリーナーで洗浄。スプリングのへたりは無かった。スプリングの自由長は295mm。使用限度は289.1mm。

インナーチューブ先端のフォークパイプブッシュを新品に変えておく。これは銅メタルにテフロンコーティングがしてあるもの。新品は表面が少しぼこぼこしていて、ここにオイルが溜まってくれる。逆に、使い込んでつるつるになってしまうとフリクションロスが出てしまうようだ。もちろんテフロンが剥げたり、傷付いていたら要交換。

ソケットボルトには新品のワッシャーを付けて取り付ける。根元部分にはスリーボンドの液状ガスケット1212を塗っておいた。ネジロック剤でもいいと思う。締め付けトルクは1.5〜2.5kg-m。

ガイドブッシュも新品に交換。これは内側にテフロンコーティングがしてある。上にバックアップリングを被せて打ち込む。マニュアルではオイルシールも被せて一緒に打ち込むようになっているが、個々に打ち込んだ方が失敗がないように思う。スライドハンマーが無いので、塩ビパイプを当ててゴンゴン。バックアップリングをいったん外してみて、ちゃんとガイドブッシュが打ち込まれているかチェック。頭が出ているとあとでオイルシールを打ち込んでもなかなかちゃんと入っていかないようだ。

オイルシールも新品に交換。メーカー名がある方を上にして打ち込む。インナーチューブを通す時にオイルシールを傷つけないよう、フォークオイルをリップ部に塗っておく。オイルシール外周にもフォークオイルを塗って打ち込みやすくする。そしてまた塩ビパイプを使って打ち込む。ちなみにリップにグリスを塗るとカジってしまってフリクションロスをおこすので、インナーチューブやオイルシールのリップ部にはグリス等を塗らない方がいいようだ。

ストッパリングがちゃんと溝に入れば、ダストシールの打ち込みはOK。この時、自重でインナーチューブがゆっくり下に降りていかなければ打ち込みミス。もう一度やり直すしかないだろう。ちなみにバックアップリングが中で遊んでいるとあとでストロークさせた時にカチャカチャと音がするようだが、まァ、これは気にしなくていいと思う。このあと、新品のダストシールを手で押し込んで完成。

今回、フォークオイルはモチュールのファクトリーラインLIGHT 2.5W-5Wを使ってみた。これがかなり良いらしい。入れるオイル量は1フォーク384cc。ただ、油面で調整するのでまずは適当に注ぎ込む。

インナーチューブをゆっくり5回ストローク。そして中のフォークピストンを静かに10回以上ストロークさせておく。あわててやると水鉄砲のようにオイルがロッドから吹き出すのだ。ストロークさせることでフォークピストン内にオイルを行き渡らせ、エアも抜ける。念のためそのまま5分ほど放置して、気泡が完全に抜けるのを待つ。

フォークピストンもインナーチューブも一番下まで縮めておいて上から油面までの高さを測る。マニュアルでは160mmとなっているが、これはどうも間違いのようで、あとでHRCからアナウンスメントが出たようだ。正しくは143mm。今回は微妙に少なめの145mmで行く事にした。油面は結局、中の空気量の調整なのだが、空気はフォークが縮むと圧縮されてフルボトム付近で急激に反発力が強くなる。オイル量を増やしてフォーク内の空気量を減らすと、ストロークの終盤でぐっと固くなる感じが増すと思う。

インナーチューブを伸ばしてスプリングを入れる。スプリングピッチが細かい方が下だ。細かいピッチが初期に縮んで小さなショックを柔らかく吸収。大きなショックには細かいピッチが完全に縮み切って大きなピッチが動き出す。二段構えのスプリングなのだ。

フォークピストンを引き出して、フォークボルトを取付ける。下のロックナットを一番下まで下ろしておいて、フォークボルトをいったん底までねじ込む。次にフォークボルトを1-1/2程戻しておいてロックナットを締め付けるのだ。この時、テンションクリックを回して13クリックあるか確認。少ないようならフォークボルトをもう少し戻し、多いようなら逆にねじ込む。要するにテンションクリックスクリューの底とフォークピストンの頭との距離でクリック数が決まるのだ。ちなみにロックナットを上下逆さまに取付けると距離が空き過ぎ、テンションクリックスクリューがいくらでもネジ込める状態になってしまうので注意。ロックナットの締め付けトルクは1.8〜2.2kg-m。

そして外した時と逆の順序でフォークを取り付ける。気をつけなければいけないのはちゃんとフォークボルトを取付けてからトップブリッジボルトを締めること。これは変形を防ぐため。最後にプリロードアジャスタを上から3本目のラインに合わせておく。これが標準。また、テンションクリックは最強位置から5クリック戻しの位置にセット。こちらも標準位置。これでフロントフォークOHの完了だ。

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