クラッチ滑りを直す

テストしてみるとクラッチがひどく滑る。これではまともに走ることが出来ないのだ。さっそくクラッチプレッシャープレートを留めている5本のボルトを外してチェック。乾式なのでこの辺のチェックは簡単に出来てイイ。クラッチプレートにはそんなに焼けた跡がなかった。激しいクラッチ滑りが出るとこのクラッチプレートが強烈に「焼き」の入った色に変わるらしい。それにものすごく焦げ臭いニオイがするとか・・・どうも今回はクラッチの戻りがただ悪いだけのような気がしてきた。

クラッチセンターの段付きをチェック。たしかに爪がひっかかるほどの段付きがあったが、通常、このぐらいの段付きはどうしても出来てしまうようだ。段付きのせいで滑りが発生するというのはかなりひどい状態でないと起こらないようなので、これも原因から除外。

クラッチリフターピースをチェック。中にちゃんとスチールボールが入っていたし、オイルもしっかり差してあった。NSRはこのリフターにアジャスター機構は付いていないので、アジャスター関係の不良は関係無しと判断。

室内にクラッチフリクションディスク等を持ち込んでチェック。クラッチスプリングの自由長は新品が38.1mmで使用限度は37.2mmだが、コイツはなぜか5本とも新品を超える38.5mmの長さがあった。これは計測の誤差〜 いずれにしろスプリングのへたりは無さそうだ。問題のクラッチフリクションディスクの厚さは3.8mmほど。新品だと3.92〜4.08で使用限度は3.5mm。3.8mmならまだOKだと思う。ついでにクラッチフリクションディスクの爪幅も計ってみたが、13.5mmほどあって、使用限度の12.8mm(新品は13.7〜13.8mm)とは程遠い状態。

クラッチワイヤーケーブルのアジャスターのネジ切り部分が曲がっていて、もしかしたらこれが抵抗になっているかも。クラッチレリーズレバーの動きを見てみると、クラッチレバーをいっぱいに戻してもレリーズの方が完全に戻っていなかった。つまりワイヤーがケーブル内で少し引っかかっている状態。ケーブルを外してワイヤーを手で動かしてみるとやはり少し重い感じだった。この程度なら問題ない気もするのだが・・・。

さらにチェックしてみるとクラッチレバーの根元が錆びていてほとんど固着状態。この部分の抵抗も含めて「半クラッチ」状態を引き起こしているのだと思う。400番のサンドペーパーで回転部の錆を削ってスムーズに動くようにしておいた。それにしてもマシンの他の部分にほとんど見られない錆がこんなところに集中していたのは意外。今回、錆予防としてマルチグリスを塗り込んでおいた。

クラッチワイヤーケーブルの曲がりがやはり気になるので修正。もともとカーブさせてあるケーブルの根元だが、さらに先が別の角度に曲がっているので、ワイヤーの抵抗が大きい感じ。バイスプライヤではさみ、メガネレンチをかけて慎重にノーマル状態まで曲がりを直しておいた。

ケーブルの片方の端にパーツクリーナーを入れたビニール袋を取り付け、これでケーブル内にパーツクリーナーを流し入れて洗浄。次に写真のようにミッションオイルを同じように袋に入れて、これで1晩かけてケーブル内のワイヤーを潤滑。たぶん新品並みのワイヤーの動きに戻ったと思う。

クラッチプレートとフリクションディスクを元のようにセットする。ちなみにNSRの乾式クラッチはクラッチプレートが6枚、フリクションディスクが5枚。ただし一番奥のクラッチプレートだけ薄いクラッチプレートBだ。フリクションディスクも一番奥のものだけクラッチダンパーディスクになっているはずだが、これはどうも普通のフリクションディスクが使われているようだった。レーサーにクラッチのショックを吸収するダンパーは必要ないのかも知れない。
クラッチプレートは面取りのある方を内側にして装着。フリクションディスクは取りあえず刻印のある方を外側にしてセットしてみたが、たぶん裏表の違いは無いと思う。

さっそくケーブルとクラッチレバーを取付けてレバーを操作してみる。やはり動きが全然違っていて、ダイレクトにクラッチプレッシャープレートを押し上げている感触が伝わってくる。テストしてみるとクラッチの滑りが出なくてホッ。これでクラッチ滑りのメンテナンス完了。

せっかくなのでクラッチレバー先端のけずれを修正しておく。これはヤスリでごしごし削ってなだらかに丸くするだけ。素材がアルミなので簡単だ。

800番程度のサンドペーパーで磨いて、さらに最後にネバダルで磨けばこんなにピカピカ。機能的にはどうでもいい箇所だが、やはり見た目がいいと気分がいい。

調子に乗って、クラッチレバーのクランプもシャーシブラックでプシュー。400番のサンドペーパーで足付けをしてそしてパーツクリーナーでしっかりと脱脂。次にネジ穴などをいろいろ工夫しながらマスキングして、数回に分けて重ね塗り。出来は上々。いままで塗装が削れて剥げていただけにかなり美しく変身したのだ。

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