センターシールをチェックする

エンジン番号MC16E-1054979、オドメーター9,350kmの88テラエンジンのクランクセンターシールをチェックする。これは左右のクランクの間にあるセンターベアリング内のラビリンスシールのことで、これで左右のクランク室の気密を保つのだ。NSRのエンジンの弱点のひとつがこのセンターシールが抜けてしまうこと。そうなると、一次圧縮のガスが隣りのクランク室に抜けてしまう。アイドリングが安定しなくなり、片排になったり、焼き付いたりする。

シリンダヘッドとシリンダ、そしてついでにインシュレータも外しておき、リアバンクに混合ガソリンを入れて、フロントバンクに流れ出てこないかどうかでセンターシールの抜けをチェックする。ガソリンと2ストオイルを1:1で混合。ガソリンできれいになるし、オイルはベアリングへの給油にもなる。混合比で漏れ方も違うとか。

リアバンクのクランク。バランサー部分に「4447」の謎の数字。シリアルナンバーのようだが、意味は不明だ。ちなみにコンロッド小端に輪ゴムを通してスタッドボルトに渡しておくと、コンロッドをセンターの位置に浮かす事が出来て自由にクランクを回せるようになる。

1万キロも走っていないし、きれいなエンジンなので不安なし。200ccの混合ガソリンをなみなみと注ぎ込む。時々フライホイールを回してクランクを動かしてやる。これで40分くらい様子をみて、漏れて来なければOK。

ところが数秒でフロントバンクから混合ガソリンがダダ漏れ。これじゃあ完全にこのセンターシールはアウト。判断に悩む余地もない。いくら走行距離が少なくてもクランクが同じ位置で長い間放置されていたエンジンとか、あるいは乾き切ったエンジンとかはダメなことが多いようだ。機械だから使い続けていたモノの方がコンディションが逆に良いってことも多いし・・・。とにかくこのクランクはもうご臨終。

2006/11/26、落札した88の初期型エンジンが福岡から到着。2万円ナリ(送料2,340円)。RCバルブサーボモーターとインシュレータ、サーモスタットetcが付いているのは嬉しいおまけ。フロントピストンに傷があるとのことで、ピストンとシリンダは期待していない。とにかくセンターシールが生きているクランクが欲しいのだ。

エンジン番号はMC16E-1035266(車体番号はMC18-1004〜らしい)。確かに若い番号だ。クランクRカバーのHONDA RACINGの文字が赤くペイントされているのがどうやら初期ロットの特長のひとつのようだ。それとフライホイールのバランス取りのくぼみが1つだった。いままでのものだとくぼみは3つ。また、ミッションオイルのドレンボルトがワイヤロック用のモノになっていた。これは後付けか、それとも元々なのかは不明。

すぐにシリンダ等を外してセンターシールのチェックにかかる。フロントピストンに縦すじ。そしてフロントシリンダも縦傷がひどくて使えない状態。リアシリンダも程度は中。オドメーター14,700kmとのこと。プラグは9番がきれいにきつね色になっていたので、社外チャンバーをつけて高回転走行をしていた感じ。フロントが抱きつきを起こしていたはずだ。それとRCバルブのカーボンは比較的少なめ。固着無し。やはり高回転をキープしていたエンジンのように思う。

さっそくリアバンクに混合ガソリンを。もちろん屋外で。火気厳禁。クランクにすこしカーボン汚れあり。回した感じは異音やゴリゴリ感なし。またコンロッドのガタもなく、この分ならコンロッド大端ペアリングも大丈夫だろう。

さて、念のため1時間以上放置してみたが、フロントバンクには一滴も混合ガソリンが流れ出てこなかった。このクランクセンターシールはOKだ。コイツを使ってエンジンを組み立てることにする。そういえば、88テラはアイドリングが安定していなかったが、それがセンターシール抜けの症状だったかも。それに燃費が12km/Lいかなかったのも怪しい。いつ抜けたか、あるいは最初から抜けていたかどうかは分らない。

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