バイクが曲がる仕組みを考える2

これまで考えていた曲がる仕組みを否定・・・(12/01/02〜12/01/12)

12/01/02 円周差による内向トルクの否定
リーンしたタイヤの様子を円錐に置き換えた模型。円錐の広い部分と細い部分の円周の長さの差によって円錐(=タイヤ)が内向するのがイメージ出来る。この時、フロントとリアのタイヤをフレームでつなぐと真っすぐにしか進まないが、ステアリング機構によってフロントタイヤに舵角がつくようにすると、それぞれのタイヤに内向力が働いてバイクが曲がる・・・と言われている。しかし、実験してみると駆動輪であるリアタイヤが独自の内向トルク(赤矢印)を発揮させるとステアリングは外側に切れてしまう(青矢印)。これでは内向トルクでバイクが曲がるどころか、曲がるのを阻害しているカタチ。また例えば、フロントタイヤの内向トルクが独自に効いてしまったら、ステアリングが際限なく切れ込んでしまう。つまり、いくらステアリング機構でフロントとリアのタイヤの向きが弧を描いたように見えても、それぞれのタイヤの内向トルクが協調してバイクを曲がらせる力になるとは考えにくいということだ。円周差による内向トルクでバイクが曲がるという考えは否定した方がいい気がする。※2015/03/11修正

12/01/02 セルフステアの確認
市販のコロ2個とヒンジを使ってバイクの模型を作ってみた。グラグラと左右に首を振るヒンジをステアリングステムにし、その延長線がバイクのようにフロントタイヤの接地面より前になるようにして、フロントタイヤを引っ張るカタチにしておく。バイクが直進している時は、車体の質量がフロントタイヤの接地面の真正面に落ちているので、タイヤも真っすぐなままなのだが、例えばなにかのきっかけでバイクが右にリーンすると車体の質量はフロントタイヤ接地面の右前に落ち、その結果、接地面を支点にしてタイヤが右に向く。これで右ターンが始まるのだが、勢いがついていると右ターンによる遠心力で接地面を支点にしてバイクがもんどりかえるように左にリーンしはじめる。すると今度は車体の質量がフロントタイヤ接地面の左前に落ち、タイヤが左を向く・・・ということの繰り返しで、スピードが出ていればバイクは自動的にバランスを取るステアリングの動きをする。これがセルフステア。
右側へリーンさせる過大な荷重をそのままにして、一定の速度を与えていれば、ある角度でバランスしてそのまま右ターンを続ける。右ターンを終了させるには、スピードを増して遠心力でもんどりかえる力を強めればいいし、同じ効果を得るためにステアリングを増し切りしたり、フロントブレーキをかけてもいい。
以上のことから、バイクが曲がる仕組みというのは、まずはバイクをリーンさせ、そしてセルフステアでフロントタイヤの向きを変えてターンするということが基本だと考える。

12/01/02 示唆に富んだ10円玉の動き
バイクが倒れないで走ることの理由として10円玉のころがりを例に上げて説明されることがある。最近では、これは例にならないと全否定されることが多いが、興味深い点が数多くある気がする。
ころがる10円玉が傾いた時に内側を向くのは、回転体のジャイロ効果ということだろう。回っている円盤の軸をぐいっと傾けても、円盤の前後は慣性の法則でいままで通りの軌跡を描こうとする。この力の合力で円盤は内向するのだが、バイクのタイヤの内向をジャイロ効果で説明してはまずい。それではごく低速でもタイヤが内向する理由にならないし、例えば自転車のタイヤのような質量の小さな回転体のジャイロ効果などは無視していい程度と考えられているからだ。たしかにウイリーをしている時など、上げたフロントタイヤを切って、そのジャイロ効果で反対側にリーンさせることはあるが、走っているバイクのタイヤが内向するのは、あくまでバイクの質量がフロントタイヤ接地面の斜め前に掛かって、タイヤの向きを変えていると考える。
しかし、ころがる10円玉が内向してターンすると、遠心力が発生してリーンに対抗する力になる点はセルフステアそのものの動きだし、倒れ込みながらどんどん進路を内側に変えてターンしていく様子には、バイクのリーンに通じる様々な要素が含まれている気がする。

12/01/03 イン側ステップから脱力する
バイクをリーンさせるには、減速で前向きの慣性のかかった上体をイン側前方に飛び込ませるようにしてバイクの左右のバランスを崩すのが一番効果的だと思っている。しかしここでいう「飛び込ませる」とはどういう動作なのか、はっきり理解しておかないとその効果が半減してしまう。
中腰姿勢から一瞬で身体を傾ける方法、それは脱力だ。左に傾けたい時、右足で蹴り込む必要はない。左足の力を抜けばその場にくずれ落ちるようにして左に傾く。具体的には左足を引き上げれば、それで脱力になる。実際にバイクに乗ってこれをやってみると、想像以上にクイックに左にリーンする。この現象は、脱力により一瞬で左ステップに荷重出来たせいなのか? いや違う。体重計に左足を乗せて脱力の際の荷重を計ってみると、60kgの体重では片足分なのでまず半分の30kgの値が出る。そして脱力するとそれが一瞬、15kgほどに減った。脱力のために足を引き上げたのだから荷重が減るのは当然だ。写真のように左右が連動しているステッパーで実験しても、同じく脱力した左足の方が一瞬、軽くなって上にあがる。ではなぜ、左側ステップへの荷重が減るのに、左にリーンするのだろう。それは結論、倒れた上体がバイクを左側に押すからである。特に右膝がタンクを左に押す力の影響が大きい。
そして話は最初に戻るが、「飛び込ませる」という動作に、イン側ステップに乗り込むことは必要無いと考えるわけである。むしろ、乗り込む反力で上体が右に戻ってしまって逆効果だ。また、右足をつまさき立ちして出来るだけタンクの右側上方を押すようにするのが効果的な理由もこれで説明がつく。

12/01/04 トラクションとアンチスクワット
アンチスクワットとは、スロットルを開けた時にスイングアームが沈みこまないための設定。ドライブスプロケット、スイングアームピボット、そしてリアアクスルを結ぶラインが図のように「へ」の字になる位置関係となっている。加速してリアタイヤ(リアアクスル)がバイクを押していくと、押していく方向からズレたスイングアームピボットを押し上げる力が生まれ、反力でスイングアームが下がる(リアショックを伸ばす)というモノ。これはチェーンドライブでもシャフトドライブでも同じだ。ちなみに逆ヘの字の位置関係にするとスイングアームは上がる。実際は加速によって身体の荷重がリアに移り、同時にリアタイヤの回転の反作用でフロントが上がることでリアサスが縮むので、スイングアームの動きはだいたい相殺される感じなのだが、このアンチスクワット効果でリアのトラクションが得られる、などどよく言われる。要するに、加速でリアが下がるところ、アンチスクワットで突っ張って、これでしっかりと路面にグリップして駆動するという理屈だ。
しかし、優秀なリアサスが付いていればアンチスクワットがなくても腰砕けにならないと自分は思う。ドライブスプロケットとスイングアームピボットを同軸とする最新バイクもあるくらいだ。ここではっきりさせておきたいのは、スロットルを開けた時にリアタイヤがしっかりと路面に押しつけられるのは、アンチスクワット効果が主ではなく、基本、リアに荷重が移るからだとシンプルに考える。それがリアサスを縮めるので、反発でリアタイヤが路面に押し付けられるのだと思う。

12/01/05 トラクションとリアステア
コーナーリング時、スロットルを開けるとなぜぐいぐいと力強く、そして安定して旋回していけるかを考える。コーナーリングの途中でクラッチを切ると、フラフラとアウト側にはらんでしまうが、スロットルを開けるとしっかり旋回していってくれる。いわゆるトラクション旋回と言われる現象。安定感が出るのは、加速によって荷重がリア側に移り、リアタイヤの面圧が高まったせいだろう。そして力強く旋回するのは、舵角がついてイン側に向いているフロントタイヤをリアタイヤがトレールによってその向いているイン側方向へ引っ張っていくからだろう(これでフロントの安定感も増す)。
ただ、スピードが出てくると扱いは難しくなってくる。基本的には、スロットルを開ければバイクは起き上がり、アウト側にはらんでいくのだ。極端になればフロントタイヤが浮く。そこでの旋回の原理は、ころがる10円玉に当てはめるといいように思う。10円玉の場合は回転体自身の慣性で内向するという違いがあるけれど、写真の模型のようにリアタイヤより前方に突き出た部分の重さがリアタイヤを10円玉の場合のように内向させていると考える。フロントタイヤが接地していれば、さらに内向に有利だが浮いていたって構わない。リアタイヤと車体が一体となって方向を変えていくのだ。リアステアという言葉はまさにリアタイヤでステアリングすることだと自分は思う。

12/01/05 スリップアングルの誤解
クルマのコーナーリングでよくスリップアングルやコーナーリングフォースという言葉を聞くが、これをバイクを曲がらせる力のひとつだと説明する解説がある。スリップアングルとは、コーナーリング時でのタイヤの向きと車体の進行方向とのズレのことで、コーナーリングフォースとは、その際に車体の進行方向に直角に生まれるイン側への力のこと。このコーナーリングフォースによってクルマはイン側に曲がると言われるけれど・・・。

コーナーリングフォースというのは早い話、コーナーでクルマが遠心力でアウトに押し出されるのに対抗して、タイヤが踏ん張っている反対向きの力のことではないだろうか。タイヤのグリップ力と言い換えてもいい。そしてスリップアングルの方は、ハンドルを大きく切れば大きく曲がるけれど、あまり大きいとスリップアングルが大きくなりすぎてタイヤがグリップしないというだけの話だと思う。
たしかにスリップアングル、コーナーリングフォース、そしてキャンバースラストなどの要素がバイクのタイヤにも働いているとは思うが、それらはバイクが曲がる仕組みの本質からは完全に除外するべきだと自分は考える。この手のクルマ用語でバイクのコーナーリングを説明する解説には、眉に唾をつけて聞かなければ・・・。

12/01/07 バイクが曲がる仕組みを考える(まとめ)
1.重心の偏りによってバイクが傾く。
2.バイクが傾くことで前輪が内側を向き、進路を内側に変える。その際、遠心力が発生してバイクを引き起こそうとするので、バイクは倒れずに転がる10円玉のように曲がっていく。
3.倒れる力と遠心力がバランスすれば、傾いたまま安定し旋回を続ける。
4.加速して遠心力が増せばバイクが起き上がり、また直進を続ける。
以上のようにシンプルに考えてみる。バイクに乗れない冬の寒い間、いろいろ考えて頭の中が少し整理出来た気がする。実際に乗れるようになってきたら、また実験と検証をしてみたいと思う。

12/01/09 ステアリングの内向の仕組みを模型で実験
1.バイクの模型を床に水平にセット。ステアリングステムの延長線を対称軸にしてフロントホイール系の前後の重量を同じに作ってあるので、この時点ではステアリングが内向する動きはない。
2.フロントタイヤの接地面に当る部分を進行方向に対して右に押してみた。
3.するとステアリングが進行方向に対して左を向いた。これはバイクを左にリーンさせ、ステアリングステムが接地面を支点にしてタイヤの前方を左に移動させたのと同じ意味。厳密に言えば、ステアリングステムの延長線と接地面からの線が直角に交わるポイントAが左に移動してタイヤを回したのだ。このポイントAが接地面より右に寄ればタイヤは右に向く。これがステアリングの内向の仕組みだと考える。
4.は合成画像だが、かりにステアリングステムの延長線が接地面と同じポイントとなる構造にすると、いくら接地面を押してもステアリングを回す力は起こらない。
ちなみに、止まったままのバイクをリーンさせると、ポイントAがフルロックまでステアリングを横に移動させてしまう。走っているバイクがそうならないのは、ぐるぐる回るキャスターが進行方向に引っ張られて真っすぐな向きになるのと同じ理屈だ。ということは減速で内向が強まり、加速で内向が弱まるということか?

12/01/12 10円玉を転がすように走る
1.はリーン開始からフルリーンまで。どうせリアタイヤはブレーキングで浮いているので気にしない。アウトにずれてもイイ。ターンはフロントタイヤを中心に行う。身体のイン側を脱力してバイクをイン側に引き倒し、フロントタイヤに舵角を付ける。この時、減速によってしっかりとフロントタイヤに加圧しておく。
2.はフルリーンから立ち上がりまで。フルリーンまで行ったら、フロントタイヤがグリップを失わないようにスロットルを開けて荷重をリアタイヤに乗せ、あとのターンはリアタイヤ中心で行う。加速でフロントが浮いてもイイ。リアタイヤがしっかり内向していくようにイン側に荷重をかけ、遠心力でバイクが起き上がるのを押さえつつ立ち上がって行きたい。
つまり、減速と加速でそれぞれ中心となるタイヤを10円玉のようにイメージし、それを単独で転がすように走るということ。頭の中ではうまく行きそうな気がするのだが、早く実際に走って試してみたい。

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